もののあはれは彩の頃。 普及版
青年・東雲暁は、目覚めると紅葉の舞う河原に立っていた。なぜここにいるのか、どう進むべきなのか、なにも覚えていないままで。ただわかるのは、目の前にサイコロが浮いているという状況だけ。「さあ、賽を振りなよ」まず、そうしないことには始まらない──謎の女・クナドにそう促され、彼は与えられた賽を振る。「──ここは」すると、彼が目にしていた景色はガラリと変わった。風流な自然もどこへやら、彼が立っていたのは京の歓楽街・秋の祇園──「四条通……」思わず口をついてしまうほど、どこか郷愁を覚えるその景観。ただし普段は賑わい豊かなこの繁華街も、今は嘘のように静まり返っている。「五マス目──残念ながら、一回休み」天より響くクナドの声。彼は、ようやくこの世界の理を知る。「双六だ」賽を振ると、マス目を進むことができる。賽を振ると、あがりを目指すことができる。そして、同様に覇を競う相手もいるということに。「あんたは敵だ。あまり馴れ馴れしくするな」制服に身を包んだ少女、野々宮京楓は冷酷に暁を敵とみなした。彼女だけではない。双六ならば、勝者となるのは一人だけ。「勝ってみせる。俺よりラッキーな奴はいない」己こそが天に祝福されし運命の持ち主であると、信じて疑わないのが彼の誇り。青年は持ち前の幸運を武器に、あがりを目指して賽を振る。
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